銀行カードローン過剰貸付起こったのは何故?総量規制との関係は?
多重債務者が社会問題になっていた2006年度末の数は171万人でしたが、貸金業法が改正され、総量規制が制定されてから、2016年10月時点では9万人に減ったとされています。
(*借り入れが5件以上ある債務者=多重債務者としての金融庁の統計数。)
最近ではTVCMなどでも宣伝している、過払い請求での貸金業界全体の利息返還額は、改正からの10年で累計6兆を超えるそうです。
そもそも、なぜ2006年の貸金業法改正が成立したかといえば、貸金業者の「三悪」によって多重債務者が増えたと考えられたからです。
過剰融資、グレーゾーン金利含む高金利、人道的でない取り立て、これら「三悪」が貸金業者から顧客に対して行われていた背景が法改正前にあります。
しかし、貸金業法は貸金業者に適応される法律であり、銀行での借り入れ契約には適応されません。
その為、銀行カードローンでは総量規制以上の借入も可能です。
そこで、銀行からの貸付にも多重債務者を生む要因があるのではないか?という声が昨今上がっていました。
銀行カードローンの過剰貸付とは?総量規制の対象になってしまうかも!?
2016年9月16日、日本弁護士連合会は「銀行などによる過剰貸し付けの防止を求める意見書」を公表し、同年10月12日には内閣や全国銀行協会に提出しました。
これを受けて、改正貸金業法10年の節目に、金融庁は銀行や信用金庫、信用組合などの融資実態も調査し始めた模様です。
銀行などの貸付への意見書の具体的な内容は、簡単に以下の通りです。
- 銀行などからの貸付を貸金業者の保証で行う場合、原則、借入残高が年収の3分の1を超えない。
- 改正貸金業法の趣旨に沿い、貸金業者自体が貸付を行う他、銀行などが行う貸付に保証する場合も総量規制の対象になる。
つまり日弁連の求めるところは、現在は総量規制対象外の貸付となっている銀行貸し付けなども、貸金業法に合わせて行う事です。
もし、この意見書の内容が新たな法改正として適用されるようになれば、確かに今以上に多重債務者は減るでしょう。
しかし、銀行貸付が総量規制の対象になった場合、困るのは専業主婦(主夫)の方でしょう。
現在は、総量規制除外貸付として銀行での借り入れが、配偶者の同意や収入証明がなくても出来ますが、意見書の通りになる総量規制例外貸付としての配偶者貸付でしか融資を受けられなくなります。
多重債務に関して貸付側の責任もさることながら、最終的にはローン利用者の管理能力によるものが大きいのではないでしょうか?
近年は、国の支援制度も整ってきており、高い税金を徴収するなりの仕事はしてきているように感じます。
その為、金銭的にどうにも立ち行かなくなる前に、民間の業者・銀行からの借り入れは一定の所で見切りをつけ、多少手間や時間がかかっても国の支援を申請する事を検討するという考えも必要といえるでしょう。
また、今後は銀行などの貸付のあり方も変わってくるとするなら、事実上年収を基準に返済に無理のない金額での借入しかできなくなります。
これからは特に、「簡単に早く出来るから。」と安易にカードローンを複数契約するのは、賢い利用の仕方ではないと断言できます。
銀行が自主規制を開始!借り入れは年収の3分の1まで?
上述の内容が2017年5月、銀行カードローンに適用され始めました。
特にメガバンクのカードローンは総量規制に準ずる審査姿勢を示しています。
みずほ銀行カードローンでは、今まで借り入れ側の年収の2分の1までを目安に貸付を行っていたのを、今後は3分の1までに改める方針を打ち出しました。
三井住友銀行カードローンと三三菱UFJ銀行カードローン バンクイックに関しては、今まで収入証明書の提出が前者は300万円、後者は100万円まで不要でしたが、今後50万円以上の借り入れ希望で、収入証明書の提出を求めるとしています。
いずれの自主規制も、ほぼ総量規制に則った形となっていますから、実質金利以外の貸付条件は消費者金融と変わらない状態です。
ただ、この銀行カードローンの貸付規制の動きは、貸金業法改正時のように法律によって定められたものではありません。
銀行による過剰貸し付けが指摘されたことを受けて、現時点では各行が各々判断し対策を講じている段階です。
その為、中には貸付条件を今までとそこまで変えていない銀行もあります。
銀行カードローンの中には、これまで対応可能としていた専業主婦の配偶者貸し付けを廃止するものが2017年6月現在出てきました。
専業主婦貸付を廃止した銀行カードローンの債務に関しては、今後の追加借り入れは出来ず、返済一徹となります。
その場合、どうしても借り入れが必要な場合は、まだ専業主婦貸付に対応している銀行カードローンへ借り換えるか、信金や労金のローンへの借り換えを検討するしかありません。
自己破産の増加と銀行の過剰貸付の関係は?
また、銀行の過剰貸し付けが指摘された要因には、自己破産件数の増加が一つ挙げられていますが、一概に規制がない銀行による貸付が自己破産の原因とは言えません。
というのは、貸金業法改正から10年がほどなく経つため、過払い請求が出来る期限が切れて、やむなく返済不能となるケースというのも自己破産件数の中にはケースとしてあるからです。
つまり、過払い請求によってここ10年ほどは救済できていた、グレー損金利時代の負債の解消が出来なくなってきたことも、自己破産件数増加には関係している可能性が高いのです。
銀行もカードローンで借入側の返済能力以上の貸付をすることもあったことを認めてはいますが、かといって昨今物凄く銀行カードローンが原因の保証会社による代位弁済率が上昇したかといえば、そうでもない点を一部の金融関係者たちは逆に指摘しています。
保証会社による代位弁済は、金融機関が契約した顧客が返済不能になった際に一時的に保証会社が債務を肩代わりして、金融機関に返済する仕組みです。
その後は、債権が金融機関から代位弁済を行った保証会社に移り、借り入れ側は保証会社に返済していく事となります。
自己破産件数増加の原因が銀行による過剰貸し付けかどうかの因果関係は微妙な所ですが、ともかく今後銀行カードローンの審査はしばらくの間、厳正となるでしょう。