日本政策金融公庫の代表的融資制度・新規開業資金について分かり易く解説!

企業や個人事業主が事業用の資金を借り入れる場合、通常は民間金融機関から融資を受けます。

 

ただ、それは長年の実績とともに経営状態が良ければの話であり、これから事業を始める、または始めたばかりで信用が全く無い企業の場合は融資を受けられないのが実態です。しかし、新規事業を起こす人で必要な資金をすべて自己資金で賄える人は滅多にいません。

 

そんな新しく事業を開始する人でも融資をしてもらえるのが、政府が100%出資している「日本政策金融公庫」です。そして、日本政策金融公庫は新しく事業を始める人や事業開始後7年以内の人に対して、「新規開業資金」(新企業育成貸付)という融資を行っています。

 

融資条件

新規開業資金の融資を受けるには以下の条件のいずれかを満たすことが必要です。

  1. 現在勤務している企業と同じ業種の事業を始めるとともに、現在の勤務先に6年以上連続して勤めている、若しくは現在の勤務先と同じ業種に通算6年以上勤めている。
  2. 大学などで修得した技能と密接に関連した職種に継続して2年以上勤めており、その職種と密接に関連した事業を始める。
  3. 技術やサービスに工夫を加え、多様なニーズにこたえる事業を始める。
  4. 雇用創出に寄与する事業を始める。
  5. 産業競争力強化法に定められた認定特定創業支援事業を受けて事業を始める。
  6. 地域創業促進支援事業による支援を受けて事業を始める。
  7. 公庫が参加する地域の創業支援ネットワークから支援を受けて事業を始める。
  8. 民間金融機関(都市銀行、地方銀行、第二地方銀行、信用金庫または信用組合)と公庫による協調融資を受けて事業を始める。

 

担保・保証人

原則として、担保・保証人が必要です。

 

融資限度額

融資限度額は7,200万円で、その内運転資金は4,800万円です。ただし、あくまでも上限であり、この金額まで借りられることは滅多にありません。

 

利率

金利は固定金利で、利率は1.16〜2.45%です(融資金額や担保によって異なる)。

 

返済期間

返済期間は設備資金が20年以内、運転資金が7年以内です。ともに2年の据置期間があります。

 

自己資金

基本的に開業資金の1/10があれば申請できるため、ハードルは低くなっています。ただし、自己資金の多い方が審査には通りやすくなります。

 

申込

申込はパソコン、郵送、電話、店頭からできます。申込書や必要書類は日本政策金融公庫のホームページからダウンロードできます。必要書類を提出してから1〜2週間後に担当者との面談になりますが、担当者が工場や店舗を視察することもあります。審査結果が出るのは早ければ1週間、遅いと1ヶ月くらい掛かります。

 

新創業融資との比較

日本政策金融公庫には同じように起業家に対する融資制度として「新創業融資」がありますが、両者の違いには以下などがあります。

新規開業資金 新創業融資
利用できる人 新たに事業を始める人、または事業開始後7年以内の人 新たに事業を始める人、または事業開始後税務申告を2期終えていない人
資金の使い道 新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする資金 事業開始時または事業開始後に必要となる事業資金
融資限度額 7200万円(内、運転資金4,800万円) 3,000万円(内、運転資金1,500万円)

なお、利用できる人の主な条件は両制度とも変わりがなく、現在勤務している企業と同じ業種の事業を始める人で、次のいずれかに該当する人です。

  1. 現在勤務している企業に継続して6年以上勤めている人
  2. 現在勤務している企業と同じ業種に通算して6年以上勤めている人

 

実は、新規開業資金は新創業融資を包括する形態になっています。日本政策金融公庫のホームページには、「新創業融資制度は、次の各融資制度をご利用いただく場合にお取り扱いできる無担保・無保証人の特例措置です」との記載があり、各融資制度には「新規開業資金」や「女性、若者/シニア起業家資金」、「再チャレンジ支援融資(再挑戦支援資金)」が記されています。
(参考サイト:お金借りるなら金利が安いおすすめはどこ?

 

両制度の違い

両制度における大きな違いは以下の2つです。

 

@担保・保証人の要、不要
新規開業資金は原則として担保・保証人が必要とされていますが、新創業融資は不要です。

 

A事業計画の内容
新創業融資は担保が必要ない分、事業計画書の内容が審査に大きく影響します。

 

融資実績(2015年度)

新規開業資金 新創業融資
融資実行件数 26,465件 26,249件
融資実行額 1,926億円 1,009億円
平均融資金額 727万円 384万円

新規開業資金と新創業融資の融資実行件数はほぼ変わりませんが、1件当りの金額は新創業融資が新規開業資金の半分程度になっています。これは、新創業融資が無担保・無保証であることから当然とも言えます。

 

 

新規開業資金の融資を受けるには事前に、担保・保証人の準備が必要です。また、担保によって利率が変わってきます。